国家障害者政策実施のための2006国家活動計画

アジア・ディスアビリティ・インスティテート
中西由起子

 2002年に女性開発・社会福祉・特殊教育省を中心として州社会福祉教育部やNGOも加わった障害作業部会が作成した案に基づき、2002国家障害者政策が決定された。そこでは、2025年までの戦略として8つを上げている。

1権利擁護キャンペーンの開発と開始
2関係者による障害問題のオーナーシップの増強と、彼らのサービス提供とプログラム策定の過程への参加の強化
3インクルーシブ教育への移行の採用
4質の高いサービス提供の保障
5総合的サービス・ネットワークの拡大、調整、モニタリング
6関連省庁等とのパートナーシップの強化
7プログラム運営とサービス提供の地方分権化
8障害者の特別なニーズを認識するための、親やコミュニティの訓練と教育の保障

 そのために以下の10項目を、焦点をあて注目すべき分野としている。国連ESCAPのアジア太平洋障害者の十年を初めとする種々の行動計画と項目の大半は大差ないが、公共交通のアクセシビリティの言及がないのが気になる。2001-2010年の期間では62億8228万ルピーが使われた経験から、省では2012年までの次の十年にはビジョン達成のために約250億ルピーが必要であると明記している。

A早期発見、アセスメント、医療
B教育訓練
C職業訓練、雇用、リハビリテーション
D研究開発
E権利擁護と大衆の意識向上
Fスポーツとレクリエーション
G建築物、公園、公共の場所のデザイン
H制度上の手配とメカニズム
I資金
Jモニタリング

 2006国家行動計画は、国家障害者政策に呼応し、かつ2004年3-5月に実施された状況分析での所見に基づいている。これは戦略的計画であり、連邦や州レベルでの100人以上の政府、NGO、民間部門の関係者との詳細な個人コンサルテーションやグループ・コンサルテーション、2、3回の政府内会議、100人以上の関係者が出席した全国コンサルテーションに従い、さらにESCAPのびわこミレニアム・フレームワークでの目標達成に必要な活動を組み入れて作られている。次の5年間での活動が焦点となっているが、2025年までの勧告も盛り込まれている。

 国家活動計画は17活動に及ぶ。

1   障害の範囲の決定と障害原因の分類
2   傷害、欠陥、疾病、その他の障害原因として知られているその他の要素の予防の向上
3   早期発見と早期療育の実施
4   医療リハビリテーションの増加
5 重度、低重度の障害児の特殊教育の強化
6 特殊教育ニーズをもつ子供のインクルーシブ教育の推進
7 女性障害者
8 情報、コミュニケーション、福祉工学を含む。情報とコミュニケーションへのアクセス
9 職業訓練、自営業を含む雇用、経済リハビリテーションの拡大と強化
10 能力構築、社会保障、持続的生計プログラムによる貧困削減
11 障害者への法的支援
12 バリアフリーな物理的環境の創造
13 国民の受け入れと社会統合と環境の向上
14 障害者スポーツ
15 補装具や福祉機器、その他の支援機器の製造と配布、および無関税の推進
16 農村部でのサービス提供NGOへの支援の増大
17 連邦、州、郡レベルの連携

 それぞれの活動は、目的/成果、障壁、実施インディケーター、2006年7月から2009年6月までの短期の活動、2009年7月から2025年6月までの長期の活動に分かれて説明されている。短期と長期の活動では、実施責任を担う省庁や団体、その実施期限が明記され、政府関係者の意欲が汲み取れる。

 パキスタンでは若い障害者リーダーの活躍もあって、ここ数年障害分野での発展ぶりはめざましい。計画どおりに障害政策が実施されれば障害者の暮らしは格段に良くなる。実施にあたってはそれぞれの実施主体が財源をつくるとするのではなく、政府自体の責任が問われている。

参考文献
Ministry of Women Development, Social Welfare and Special Education, National Policy for Persons with Disabilities 2002
Ministry of Social Welfare and Special Education, National Plan of Action 2006 to Implement the National Policy for Persons with Disabilities

(31/1/2007)