エンパワメント ー Asia-Pacific Development Center on Disability ニュースレター

    アジア大平洋障害者センター
    3号 2003年4月

1. 自立生活   (http://www.apcdproject.org/publication_3_il.html

2

a.

自立生活トレーニング 2003年1月27日〜2月1日

2

b.

タイにおける自立生活〜3つのパイロットプロジェクトのレビュー:スポンタム・モンコルサワディ(Suporntum Mongkolsawadi)氏    (http://www.apcdproject.org/publication_3_il2.html)

3

c.

自立生活研修におけるピア・カウンセラーへのインタビュー

5

2. 障害者に優しい環境づくりに関する研修 2003年2月25日〜3月11日http://www.apcdproject.org/publication_3_nhe.html

6

a.

障害者に優しい環境づりの促進を目指して

6

b.

定義と背景

7

c.

活動の向けての課題:アクセシビリティ

7

d.

障害者に優しい環境づくりに関する研修の印象 リソース・パーソン:川内美彦

8

3. アフリカ障害者の10年からの訪問者   (http://www.apcdproject.org/publication_3_african_decade.html)

8

a.

アフリカ地域における域内協力

8

b.

アフリカ障害者の10年の背景

9

4. ミッション報告    (http://www.apcdproject.org/publication_3_missionreports.html)

10

a.

インド 2002年12月29日〜31日

10

b.

チェンマイ 2003年2月13日

11

地域におけるネットワーキングと協力

11

c.

ベトナム 2003年2月13日〜19日

12

d.

フィジー 2003年3月2日〜7日

12

e.

ラオス人民民主共和国

13

5. APCDの活動    (http://www.apcdproject.org/publication_3_apcdactivities.html)

14

a.

APCDロゴコンテスト

14

b.

2003年1月から3月の活動を振り返って

14

c.

2003年度4月〜9月の活動予定

15

6. 地域ニュース   (http://www.apcdproject.org/publication_3_regionalnews_events_tips.html)

15

a.

障害に関するイベント

15

b.

報告

16

・ アジア太平洋地域における障害者の職業訓練と雇用に関する技術コンサルテーション

16

・ アクセス可能なICTと障害者に関する地域間セミナー及びデモンストレーション・ワークショップ2003年3月3日〜7日 フィリピン マニラ

16

c.

記事

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・ タイ発、録音図書販売

17

・ タイ国がアフガニスタンへ車椅子を寄贈

17

7. 編集後記    (http://www.apcdproject.org/publication_3_editorial.html

17

1. 自立生活 (http://www.apcdproject.org/publication_3_il.html#ilthai

自立生活研修
タイにおける自立生活〜3つのパイロットプロジェクトのレビュー:
自立生活研修におけるピア・カウンセラーへのインタビュー

a. 自立生活トレーニング 2003127日〜21
20003年1月27日〜2月1日、タイの障害者を対象とした「第2回障害者の自立生活研修(the Second Independent Living Training)」が、アジア太平洋障害者センター(APCD)の協力の下、レデンプトリスト障害者職業訓練学校((Redemptorist Vocational School for the Disabled: RVSD)主催で実施されました。初日はバンコクにおいて、自立生活のコンセプトを学ぶセミナーが開催され、300名以上が参加しました。翌28日からは5日間にわたり、パタヤにてピア・カウンセリング・ワークショップが行われ、37名の障害者のリーダーが、障害を持つ日本人専門家から、ピア・カウンセリングの技術を学びました。

この「ピア・カウンセリングの理解促進および技術移転」のためのトレーニングは、国際協力事業団(JICA)が支援する自立生活研修(3年計画)の2年目のプログラムとして行われました。初年度は、自立生活のコンセプトを集中的に学び、最終年度は自立生活センターのマネージメントをテーマとしたプログラムが予定されています。本研修の最終目標は、地域における障害者のリーダーをトレーニングし、自立生活のコンセプトの理解を深め、その技術を習得することにより、障害を持つタイ市民をエンパワーすることです。

エンパワーされた障害者による障害者のエンパワー
自立生活に関する日本人専門家の秋山氏は、本研修プログラムに初年度から参加しています。今回の参加を通じて彼女は、「障害を持つタイ人リーダーは次第にエンパワーされ、自信を持つようになってきた」との感想を述べており、研修2年目にして、タイ人リーダーの間にすでに前向きな姿勢が生まれていることを指摘しています。また、もう一人の日本人専門家である中原氏も、「ピア・カウンセリングの理解促進および技術移転のためのワークショップを通じて、タイ人リーダーの表情が日ごとに明るくなってきた」と報告しています。

自立生活研修が最初にタイに紹介されたのは3年前のことでした。非常に熱心な自立生活の実践者であるレデンプトリスト職業訓練学校(RVSD)校長のスポンタム・モンコルサワディ(Suporntum Mongkolsawadi)氏が先駆的な役割を果たし、実現したものです。初年度のトレーニングの結果が実を結び、異なる県(province)での3つのパイロットプロジェクトの実施につながりました。各県では、自立生活の実現を目指して毎月集まり、それがより多くの人の関心を呼び起こすきっかけとなっています。

自立生活のコンセプトと運動を学ぶことで、ピア・カウンセリングの機能を併せ持つ自立センターの施行につながることが期待されます。APCDは、自立生活研修がタイから近隣諸国、アジア太平洋地域へと広がることを願っています。

b. タイにおける自立生活〜3つのパイロットプロジェクトのレビュー:スポンタム・モンコルサワディ(Suporntum Mongkolsawadi) (http://www.apcdproject.org/publication_3_il2.html)

パタヤにあるレデンプトリスト障害者職業訓練学校(RVSD)は、障害者を対象に電子工学とコンピューターのトレーニングを行っています。皆さんの多くは、なぜRVSDが、自立生活プロジェクトの促進に関わるようになったのか不思議に思っているかもしれませんので、まずは、その経緯を説明します。

1999年に、ヒューマンケア協会代表の中西正司氏、障害者インターナショナル(DPI)アジア太平洋地区開発担当官(Regional Development Officer for Asia and the Pacific)のトポン・クンカハンチット(Topong Kulkhanchit)氏と私の3人は、「障害者が社会の中で誇りと尊厳をもって生活できるようになるにはどうすればいいか?」という自立生活のコンセプトについて、数回にわたり話し合う機会を持ちました。また同年中西氏が、ハワイで開催される「第2回世界自立生活サミット」に私が参加するための財源を見つけてくれました。私は、このサミットへ参加したことで、自立生活のコンセプトについてより深い理解を持つようになりました。

2001年には国際協力事業団(JICA)が、自立生活プログラムへ3年間の資金援助を約束し、障害を持つ日本人専門家が、トレーニングと文書化のためのリソース・パーソンとして派遣されました。2002年1月には、自立生活のコンセプトに関する第1回自立生活研修が開催されました。翌年1月には、ピア/カウンセリングをテーマにした第2回目の研修とセミナーが開催され、第1回目の研修に参加した、3つのパイロット県(province)、ナコーン・パホム(Nakhornpatom)、ノンタブリ(Nonthaburi)、チョンブリ(Chonburi)からのリーダーが、自分たちの経験を他の参加者と共有し、意見交換を行いました。第3回目の研修とセミナーは、自立生活センターのマネージメントにテーマに、2004年の1月に開催が予定されています。

方法論の模索
2002年1月に行われた第1回研修の後、次の3つの課題が明らかになりました。
1) セミナーを通じて得た知識を、参加者がいかに自身の状況に適合させ、取り入れていくことができるのか?
2) 集中的な研修を受け、自立生活のコンセプトを理解した参加者が、パイロット・プロジェクトを3県(province)において、いかに立ち上げることができるのか?
3) これらのプロジェクトと自立生活運動を、他県および地域内他国において、いかに展開していくのか?

障害に関する意識の向上
これらの課題に取り組むために作業部会が形成されました。作業部会には、パタヤのレデンプトリスト障害者職業訓練学校(RVSD)、ナコーン・パトム障害者協会(Nakhornpatom Association of Disabled Persons) 、ノンタブリ障害者協会(Nonthaburi Society of Disabled Persons)、チョンブリ障害者協会(Chonburi Association of People with Disabilities) からの代表者が参加しました。彼らは、自立生活運動を、研修とセミナーの開催だけではなくより広い視点から考え、自立生活のコンセプトをより広く紹介するために、ニュースレターの発行や放送台本の原稿準備を行うなど、広報活動にも取り組みました。

研究と評価
3つのパイロット県において自立生活プロジェクトの参加者は、より多くの障害を持つ人がプロジェクトへ参加するよう、積極的に奨励しました。例えば彼らは、自立生活の技術研修や障害者の採用、また介助者のトレーニングと供給などを含む自立生活プログラムの計画を策定しました。これは実行に移され、評価される予定であり、その教訓は、アクティブ・リサーチ手法によりまとめられ文書化される予定です。

トレーナーのためのトレーニング
第二の課題は、プロジェクのリソースを構築すること、つまり、障害者の中からリーダーとなる人材を選び出し、プロジェクトを担当するようトレーニングすることでした。リーダーには重度の障害を持った人が望ましいのですが、プロジェクトの予算は限られており、時間的余裕と経済力のあるそのような人物を見つけることは容易ではありません。重度の障害を持つ人は、公共交通機関を利用することができないので、特に、交通費の負担が大きく、介助者が必要となることが多いのです。すでに仕事を持ちプロジェクトに参加している人にとっても、費用負担がふくらむ一方で、収入は向上しないか悪くは減少するという課題を抱えています。

重度の障害をもつ人々
もし、リーダーになりたいと望む、またリーダーになることができる重度の障害者がいれば、プロジェクトは前進します。ある時、いくつかの問題が発生しました。我々は、多くの障害者が車椅子や褥瘡を防ぐためのクッション、医療手当やリハビリテーションを必要としていることがわかりました。作業部会はこれらのニーズに応えるために、人的・財的資源を求めて奔走することになり、多くの時間が連絡や移動にとられることになりました。

自尊心
第3の課題は、障害者の自尊心の低さでした。障害を持つ人が自分自身を低く評価したり、また、障害者の“生”の価値に気づかない保護者により、その傾向が強められることがありました。障害者の中には、自分自身の可能性を最大限に伸ばすことに熱心でない人もいます。例えば、就職することにあまり熱心でなかったり、日常生活を他人に依存しきるなど、生きることそのものにも関心が低い障害者もいます。また、障害者を持つ家族の中には、障害を持つ人の“生”を尊重しなかったり、中には、家族に障害者がいることを恥と感じ、社会から隠そうとする人もいます。

チャレンジ
多くの問題や妨げがあるにもかかわらず、作業部会のメンバーは決してあきらめず、研修を通じて学習し、アイディアを共有することを熱心に続けています。また、中西氏はeメールや会合を通じて、タイの作業部会への更なる助言をくださる他、より多く会う機会を設けるよう努力も続けています。

5つの懸案事項
2002年の12月末までに、作業部会は5つの懸案分野を明確に示しました。
1. 重度の障害を持つようになった人の中には、自殺を考える人もいることから、最も重要かつ必要なことは、危機的状況にある障害者をエンパワーすることある。
2. 障害者のリハビリテーションは、いまだに、自立生活を行うには至っておらず、リハビリテーションが行われた後でも、重度の障害者は他の人に依存した生活を送っている。
3. 障害者、特に重度障害者は、いまだに宿命だと決めつけられ、身体的にも精神的にも苦しんでいる。
4. 重度の障害があっても、トレーニングを受け必要な支援が受けられれば、自立生活を送ることがでる。
5. 障害者の生活の質を向上させるために、あらゆるサービスが計画され実行されなければならない。

最後に
特にピア・カウンセリングを含む自立生活研修を実施した本プロジェクトは、タイにおいて、障害者の自立生活のコンセプトの発展につながりました。これは、タイとよく似た経済、政治、社会、文化状況にある隣国においても導入されうるべきものであると考えます。

この3年間のパイロット・プロジェクトを完了する頃には、タイにおいて障害者の自立生活が可能かどうか、それはなぜなのか、またいかに行われるべきかについての答えが得られるにちがいないと私たちは考えています。

願わくば将来的に、このパイロット県(province)のメンバーが増加し、政府が国家政策を策定する際に、この動きを支援する法律や規則が盛り込まれることを期待しています。これは、「施設を基盤とした概念と市民社会の地域福祉(Institutional Base Concept and Community Welfare of Civic Society)」の確立を十分に検討することにより、可能になると考えます。これらのすべては、リハビリテーションにとってやりがいのあることであり、また、障害者が彼らの可能性を最大限に活かすことにつながるものでしょう。タイ社会のコンテクストにおいて、よりよいコンセプトが発展していくことを、私は信じてやみません。

c. 自立生活研修におけるピア・カウンセラーへのインタビュー

Q1.今年の研修に、どういう印象を持たれましたか?

秋山氏:昨年の参加者は、自立生活に対して複雑な感情を持っていました。自立生活の理解が十分ではなかったことから、それが本当に彼らにとって有益なものであるのか、確信がもてなかったのでしょう。しかし、昨年の参加者の何人かが今年も参加し、リーダーとなり、自立生活へのより理解を示すようになりました。また、過去数年の経験から自信を深め、自立生活とピアカウンセリングを学ぶには何がもっと必要であるかを理解するようになりました。

中原氏:研修を通じて、参加者の表情が変わりました。初日は、実習のない講義だったので、自立生活の意義を完全に理解するには至らなかったのだと思います。さらに、知識と経験の不足から、おそらく彼らは自立生活に取り組む十分な自信がなかったのでしょう。一方で、パタヤでの参加者は実習で、例えば、自殺を考えている友人をいかにサポートするか、ピアカウンセラーとどうつきあっていくか、など実際に即した問題を通じて、考えをぶつけ合い意見交換を行い、自立生活に対する共通認識を持つようになったと思います。そして、最終的には、自立生活とピアカウンセリングに対して自分自身の理解を深めるに至りました。

Q2.参加者は、何を一番に学んだと思いますか?

中原氏:ピアカウンセリングにおいて最も重要なことは平等である、ということを学びました。カウンセラーとカウンセリングを受ける人の間に、何の違いもありません。また、ピアカウンセリングの基本的なアプローチは聞くことであり、注意深く聞くことがアドバイスすることよりも重要である、ということも学びました。何もアドバイスをしないということは、何もサポートをしないということではありません。話を聞くこと自体が、その人自身が解決策を考え見つけることをサポートしていることになります。もし、リーダーがアドバイスを与えたら、彼らは自分で考えようとせず、実際には、自分自身で考える機会を奪うことになります。このようにして、人々は自立よりも依存するようになっていくのです。彼らの話を聞くことで、彼ら自身が考え、決定することができるようになるでしょう。これは、自立生活の始まりです。

Q3.研修終了後、タイの参加者に期待することは何ですか?

中原氏:彼らには、タイ社会のニーズにあった「タイの自立生活」を見つける時間が必要です。鍵となる要素は、タイ社会における自立生活に向けて、社会運動を推し進めることです。自立生活は簡単に成功するものではありませんが、特にピアカウンセラーとなりえる参加者が、近い将来「タイの自立生活」を発展させることを期待しています。

Q4.タイのような自立生活研修が役立つと思われる、他の途上国をご存知ですか?

中原氏:はい。自立生活は国や文化にかかわりなく、心理的バリアを含むすべての障害からの開放を追及するものです。しかし、一人の人間だけでこれを達成することは難しく、一緒に活動したり、サポートしたり、自立生活運動を社会に促進するNGOなどの組織を形成する、仲間や友人が必要です。通常、社会変革を引き起こすのはこのようなアドボカシーなのです。

2. 障害者に優しい環境づくりに関する研修 2003225日〜311日 (http://www.apcdproject.org/publication_3_nhe.html

a. 障害者に優しい環境づりの促進を目指して

APCDは、2003年2月25日から3月11日にわたり、第3回アジア太平洋地域内研修コース「障害者に優しい環境づくりに関する研修(the third Regional Training Course for Trainers Course on the Promotion of Non-handicapping Environment for Persons with Disabilities)」を、タイ、バンコクにおいて開催しました。本研修は、国際協力事業団(JICA)、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、障害者の機会平等を促進するタイ国社会開発人間保障省の協力の下に実現したものです。

アジア太平洋地域のすべての国において、障害者のエンパワメントとバリアフリー社会の促進を目指すAPCDにとって、障害者に優しい環境づくりは、非常に大きな意義があります。

研修の対象者は、建築家、エンジニア、都市計画家、公共交通機関の計画家、行政官、障害問題に関わるNGOの代表、障害者の自助組織の代表です。バングラデシュ、中国、フィジー、インドネシア、ラオス人民民主共和国、マレーシア、フィリピン、スリランカ、タイの9カ国から30人が参加しました。

本研修の第一の目的は、参加者がそれぞれの国において、障害者に優しい環境づくりやユニバーサル・デザイン、バリアフリー社会を普及するための、トレーナーやプロモーター、リソース・パーソンの養成を支援することでした。第二に、参加者の連携とネットワークを構築し、参加者の各国およびアジア太平洋地域において、障害者にやさしい環境づくりを促進することでした。

アクセス調査とフィールド訪問
研修コースでは、障害に優しい環境づくりを促進し、設計している専門家によるプレゼンテーションや、障害の種別を越えた認識を深めるための模擬練習、アクセス調査、フィールド訪問なども行われました。参加者は、さまざまな障害を持つ人々がアクセスできる場所を判定するために、買物、教育、リクリエーション、交通機関に関する場所において、アクセス調査を実施しました。また、フィールド訪問を行い、農村および都市部の学校におけるアクセスの程度の比較、バンコクに建設中の地下鉄におけるアクセスの程度を観測した他、パタヤ市を訪問し観光地におけるアクセスの程度も実見しました。参加者は研修のどのテーマについても、非常に熱心に学んでいました。

研修に先立ち、「障害者に優しい環境」に関する基礎的な知識をすでに持っている参加者たちは、「障害者に優しい環境は、障害者だけでなく、高齢者やその他多くの利用者の快適な生活にも貢献するものであり、インフラや公共交通機関へのアクセスを提供することにつながるだろう。また、障害者の主流社会への統合(インクルージョン)を加速し、その自立を促進するだろう」と述べていました。

ユニバーサル・デザイン
研修終了後参加者は、ユニバーサル・デザインに関する勉強は非常に有益であると述べました。ユニバーサル・デザインを学ぶことで、彼らはアクセスチェックを通じて問題を特定し、改善のための提言を行うことが出来るようになりました。バリアフリー社会は、社会のメンバー全員のためになるのです。

b. 定義と背景

国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)が述べた「障害を与える環境(handicapping environment)」とは、環境を構築する要素となる公共交通機関と情報システムを含む、建物や道路、歩道などを意味するものです。これらの要素が与える障害は、障害者だけではなく、高齢者やその他多くの利用者の快適な生活に影響するものです。

障害者と社会のすべての人々は、安全な物的環境の中、何の障害もなく自由に動き回る権利を持っています。障害者にとっての安全規準や利便性、有用性に適した環境は、すべての人の利益につながるのです。

c. 活動の向けての課題:アクセシビリティ

「アジア太平洋障害者の十年(1993〜2002年)行動課題」は、障害者に優しい環境づくりを促進することで、障害者の公共建築物へのアクセスを改善することを提言しています。「環境と公共交通機関のアクセシビリティ」は、新アジア太平洋障害者の10年における「びわこミレニアム・フレームワーク(BMF):アジア太平洋地域におけるインクルーシブでバリアフリーな権利に基づく社会の促進を目指して」において、優先事項とされています。

研修の成果
参加者は、自国に戻ったら次のことを行うと述べました。
- ユニバーサルデザインについての認識を広める
- 建築・施工において、(障害者に配慮した)デザインの考え方を主張する
- 公営住宅において障害者に優しい環境づくりの考えが取り入れられるよう尽力する
- 技術を共有し、計画を実施するにあたり、政府組織とNGOのネットワークを構築する

障害者は次によりエンバワーされると、参加者は感じました。
- 教育、雇用、交通機関などへの平等なアクセスを与え、地域の中にとけこみ、目に見える存在になること
- 関係機関や個人に、障害者に優しい環境づくりを提唱すること
- 障害者のアクセシビリティに関する計画や法規の策定、および政府への提言を行う際に、障害に関わる組織と共に活動すること

研修最終日の2003年3月11日には、参加者は「障害者に優しい環境づくりの促進に関する、2003年バンコク声明(Bangkok Statement 2003 on the Promotion of a Non-handicapping Environment for Persons with Disabilities)を作成しました。声明は、国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)地域における政府がNGOと協力し、特に建物や公共交通機関へのアクセスに関する点において、びわこミレニアム・フレームワーク(BMF)の実施の促進を奨励しています。

d. 障害者に優しい環境づくりに関する研修の印象 リソース・パーソン:川内美彦

私は研修の後半、2003年3月3日から12日に行われた「障害者に優しい環境づくり」の部分に参加しましたが、強い関心を持ち、やる気あふれる参加者の様子に、非常に感銘を受けました。

参加者の飲み込みは早く、リソース・パーソンが説明するコンセプトと取り組むべき問題をすぐに理解しました。

確かに、参加者はそれぞれの自国における異なった問題に取り組まなければなりませんでしたので、リソース・パーソンはいくつかの事例を紹介し、社会のニーズに合ったユニバーサル・デザインの実践には複数の方法があることを参加者が理解できるように努めました。

最終日には、参加者がそれぞれの自国で実施するよう計画された活動が共有されました。参加者が研修を通じて、「障害者に優しい環境づくり」に関する知識と理解を深めたことが見て取れました。私は、人々が参加型の社会の実現を望む限り、このプログラムを継続する価値があると感じています。

3. アフリカ障害者の10年からの訪問者(http://www.apcdproject.org/publication_3_african_decade.html)

a. アフリカ地域における域内協力

2003年2月23日〜26日、南部アフリカ障害者連盟(Southern African Federation of the Disabled: SAFOD)加盟の9カ国(ボツワナ、レソト、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ共和国、スワジランド、ザンビア、ジンバブエ)の代表10名が、タイを訪問しました。目的は、「アフリカ障害者の10年(2000年〜2009年)」の戦略を立てるために、「アジア太平洋障害者の10年」の経験からその10年の計画、実施、評価の方法を学び、この地域の障害者に関わる団体と情報を交換し、協力関係を構築することでした。

タイ滞在中、代表者たちは、ノンタブリ(Nonthaburi)、ナコーンパトム(Nakhornpatom)、チョンブリ(Chonburi)で行われている自立生活パイロットプロジェクトの他、農村地域に住む昨年度の研修参加者を訪問しました。

また、2003年2月25日には、アジア太平洋地域内研修コース「障害者に優しい環境づくり研修」の開会式にも参加し、アジア太平洋の11カ国の参加者に向け、カントリー・レポートの発表を行いました。

◆南部アフリカ障害者連盟(Southern African Federation of the Disabled: SAFOD
SAFODの広報官、シーグッフリッド・ランジ氏(Mr. Siegfried K. Runge)は、10の加盟国からなる当連盟を次のように説明しています。SAFODは、障害者による障害者のための団体です。1986年に、南部アフリカ開発調整会議(Southern Africa Development Coordinating Conference: SADCC)の加盟国と、南部アフリカの反アパルトヘイト運動に関わる障害者の代表による、非政府組織の連盟として設立された、南部アフリカにおける、独立した障害者の人権団体のネットワーク組織です。

主な目的は、障害者団体の設立と既存の団体の強化を支援、奨励することです。また、障害者組織の管理担当者やリーダーのトレーニングを促進したり、障害者や地域障害者団体の発展、自助プロジェクトのコーディネートを行っています。

b. アフリカ障害者の10年の背景

「アフリカ障害者の10年(2000年〜2009年)」は、1999年7月、政府機関とNGOの革新的なパートナーシップを示し、アフリカ統一機構(Organization of Africa Unity: OAU)により、公式に宣言されました。1998年に開催された第5回DPI世界会議メキシコ大会に参加した代表者たちは、アフリカの障害者の生活の質の向上、平等化を目指して、「アフリカ障害者の10年」をスタートさせる必要性を認識しました。

アフリカ障害者の10年の目的は、
キ 障害者とその家族の貧困を緩和する
キ 障害に関する人々の意識向上と、自己の意識化を促す
キ 平和を促進し障害の原因を断ち切り、また、その他障害の原因となるものを取り除く
キ アフリカ人の障害者の声を大きくする
キ アフリカ各国の政府が、障害を社会、経済、政治の課題として掲げるようにする
キ アフリカ統一機構(OAU)メンバー諸国による障害者に関する協定の採用をすすめ、国連障害者機会均等基準の実施を先鋒する
キ 世界人権宣言に関する国連の取組みを支持する
キ 障害を持つ子どもや若者、女性の抱える問題に取り組む
キ アフリカの障害者の利害を守るための政策・法規制の基礎として、国連障害者機会均等基準を実践する
インクルージョン・インターナショナルや世界ろう連盟、世界盲ろう者団体など、障害者に係わる多くの国際機関が、上述の目的を実践する活動を支持しています。これらの団体は、汎アフリカ障害者連盟(Pan African Federation of the Disabled:PAFOD)と共に活動する委員会のメンバーです。この他に、アフリカ統一機構(OAU)やアフリカ・リハビリテーション研究所(the African Rehabilitation Institute: ARI)、アフリカ経済委員会(the Economic Commission for Africa: ECA)などの地域組織や、国際労働機関(the International Labour Organization: ILO)も参加する予定です。

この10年を通じて、アフリカの障害者の生活の質に、肯定的な変化を創出することが期待され、これには、政府および関連団体の支援が必要です。アフリカにおける多くの人々の生活は、この10年の成功にかかっているといえます。

4. ミッション報告 (http://www.apcdproject.org/publication_3_missionreports.html)

a. インド 20021229日〜31

APCDのミッションチームは、2002年12月29日〜31日、インド、カルカッタにおいて開催された、第16回精神薄弱全国会議(the XVI National Conference on Mental Retardation)に参加しました。この会議は、NGOの協力の下、国立知的障害研究所(the National Institute for the Mentally Handicapped: NIMH)および障害者福祉協会(the Association for Welfare of the Handicapped: AWH)の主催により開催されたものです。会議の年間テーマは、「職業訓練と職業斡旋、サービス受給者の満足度と、CBRモデル」です。知的障害に対する人々の意識高揚、インド南部における人的資源開発の促進、知的障害者の社会へのメインストリームを最大限に効果的にすすめることを目指していました。この全国会議は、地理的にも人口数からも大国であるインドの全州・全地域をカバーする唯一の会議であり、障害に係わる100以上のNGOが、この全国会議に参加しました。CBRモデル、実践、研究に関する多くの発表が行われ、これは、インドが知的障害者のためのCBRを先駆的に行っている国の一つであることを示すものでしょう。

アロカ・グーハさん(Mrs. Aloka Guha)は、インド政府の社会正義・エンパワーメント省の下にある「自閉症、脳性まひ、知的障害、重複障害をもつ人々の福祉のためのナショナル・トラスト(the National Trust for the Welfare of Persons with Autism, cerebral Palsy, Mental Retardation and Multiple Disabilities)」の議長で、意識高揚キャンペーンと、障害者の人間性開発の促進に強い影響力を持つリーダーです。

クン・アハメド・クッティー博士(Dr. Hunh Ahamed Kutty)は、主にインドのケララ州を基点として、障害児のインクルーシブ教育、訓練学校、カウンセリング・センター、CBR、薬およびアルコール依存症のリハビリテーションプログラムを運営する障害者福祉連盟(AWH)の理事長です。AWHは、障害に関する意識高揚キャンペーンを推進すると同時に、音楽やダンス、芸術活動を行う会議を開催しています。

APCDのチーフアドバイザーである二宮アキイエ教授が、APCDプロジェクトについて発表し、地域資源を最大限に活用し動員するためには、プログラム、情報サービス、また、地域のネットワークとの協調が必要であることを訴えました。また彼は、「知的障害者と高齢化社会(Mentally Challenged Persons and Ageing Society)」についても発表し、多くのNGO代表がAPCDとの協調について、前向きな姿勢を示しました。会議期間中、APCDはブースを設け、活動についての広報活動に努めました。また、APCDミッション・チームは、ケララ州の農村部も訪問し、知的障害者にとっての地域開発に関する研究を行いました。

日本のNGOが支援する「Seirei Asha Bhavan:聖隷希望の家」は、職業訓練、識字教室、リクリエーションとスポーツを通じて、地域に根ざしたプログラムの開発を行ってきました。彼らは、地域の民家を活用し、村ベースの4つの開発センターを設立しています。ディレクターのヴァーゲッセ・アブラハム氏(Mr. Varghese Abraham)は、1990年からこのプログラムを立ち上げ、今では100名を超える知的障害者にサービスを提供しています。彼が実施する地域リーダー養成コースでは、資金調達、マネージメント、人々の意識高揚キャンペーンについての内容も含まれています。彼は、それぞれの地域に根ざしたプログラムにおけるリーダーの一人として、知的障害のある子どもを持つ両親をトレーニングし、リーダー養成を行っています。また、CBRプログラムの専門家に、地域の人々のボランティア育成を委託しています。この小規模で草の根レベルのアプローチはとても効果的です。アブラハム氏の夢は、南部ケララ州のすべての地域においてCBRプログラムが広まることです。

b. チェンマイ 2003213

APCDミッションチームは、2003年2月13日に、タイ チェンマイ県を訪問し、CBRプロジェクトと自立生活プログラムの視察を行いました。ミッションチームは、ハンディキャップ・インターナショナル、障害と開発担当マネージャーのソムチャイ・ラングシルプ氏(Mr. Somchai Rungsilp)、持続可能な開発と教育促進研究所(Institute of Sustainable Development Education Promotion)の事務長である、ナイヤナ・ワイカム氏(Ms. Naiyana Waikham)に会い、チェンマイで様々な組織が実施しているCBRプロジェクトについて、広範な知識を得ました。そして、ソムチャイ・ラングシルプ氏に、この地域で2003年6月に実施予定の、APCDの「地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)研修」プログラムのあり方について相談しました。

チェンマイを訪問中、APCDミッションチームは、ハンディキャップ・インターナショナル主催の「障害者リーダーによるプロジェクトの持続可能性強化(Sustainability Enhancement of Persons with Disabilities Leader Project)」セミナーにも参加しました。本研修の対象者は、県リハビリテーション委員会(Provincial Rehabilitation Committee)のメンバーである、障害者のリーダーです。

また、ムアング郡(Muang district)のフアイ・サイ(Huay Sai)村も訪問し、自助組織の主導で行われている、自立生活プロジェクトも見学しました。2つの家族への自立生活に関するインタービューに同席したミッションチームは、非常に感銘を受けました。また、ポンヤン区(Pong Yang sub-district)とマエリム郡(Mae Rim District)の会議へ参加し、区行政組織のメンバーと区行政組織の役割と村レベルでの地域開発活動について議論をするなど、この他にも、チェンマイの多くの農村部を訪問し、CBRプロジェクトについて学ぶ機会にも恵まれました。

このミッションで、APCDはチェンマイの技術促進事務所所長の協力をいただきました。所長は、6月に行われるAPCD主催のCBR 研修、そして将来に向けて、APCDの活動に積極的にかかわっていくことを約束してくれました。

地域におけるネットワーキングと協力

APCDは、ベトナム、フィジー、ラオス人民民主共和国へミッションチームを派遣し、政府とNGOの取組みの焦点を特定し、APCDと障害に係わる団体のネットワーキングおよび協力関係を構築することを目指しました。

c. ベトナム 2003213日〜19

APCDは、2003年2月13日から19日にわたり、ベトナム、ホーチミン市とハノイ市へミッションを派遣し、5つの政府機関と18のNGOを訪問しました。

ベトナムでは、労働・傷病兵・社会福祉省(Ministry of Labour, Invalids, and Social Affaires: MOLISA)が、主に障害に関する事項を取り扱っています。MOLISAの下にある国家障害調整委員会 (National Coordinating Committee of Disability、NCCD )は、中心となる政府機関であり、ミッションチームは、NCCD常任メンバーであり委員長であるMr. Nghiem Xuan Tue氏を訪問しました。Tue氏は、APCDを全面的に支援することを約束してくれました。

またAPCDは、保健省(Ministry of Health: MOH)国際協力部部長のトラン・トロン・ハイ医師(Dr.Tran Trong Hai)に面会する機会にも恵まれました。彼は過去10年にわたり、CBRプロジェクトにおいて積極的な役割を果たしています。そのCBRプロジェクトは、プライマリー・ヘルス・ケア(基礎保健)に焦点をあて、40省(Province)で約20,000人のワーカーが係わっています。また、ハンディキャップ・インターナショナル(ベトナム)が、MOHと密接に連携し、ベトナムのCBRモデルの構築を目指しています。

「障害フォーラム」は、ベトナムの障害に係わる団体にとって、非常に大きな役割を果たしており、eメールリストやウェブサイトなどの情報により、団体間を結びつけるきっかけとなっています。APCDミッションチームは、障害フォーラムのネットワークと、フォーラムの促進に献身的にかかわるニュエン・ホン・ハ女史(Ms. Nguyen Hong Ha)に非常に深い感銘を受けました。障害フォーラムに関する詳細は、ウェブサイト http://forum.wso.netをご覧下さい。

ミッションチームは、観光業や障害者が作った製品販売など、障害者のためのサービス提供を行う障害者による会社、ドン・ハン(Dong Hanh)も訪れました。

このミッション派遣を通じてAPCDは、政府機関やNGOとの協力関係およびネットワーキングの構築に成功したといえます。APCDの人材開発部門(Human Resource Development)と情報通信技術部門(Information and Technology Communication)も、それらの組織がAPCDの研修コースの準備に興味を示し、協力を申し出てくれたことを、うれしく思っています。

d. フィジー 200332日〜7

APCDミッションチームは、2003年3月2日から7日にわたり、フィジー諸島共和国の首都スヴァにおいて、5つの政府機関と9つのNGOを訪問しました。

ミッションチームは、DPIアジア太平洋ブロック事務局副事務局長であり、フィジー障害者協会(Fiji Disabled Peoplesユ Association.)のメンバーである、セタレキ・マカナワイ氏(Mr. Setareki Macanawai)と面会しました。これらの団体は、フィジーの障害者にとって最も重要なNGOであり、フィジー障害者協会は中心的な役割を果たすNGOとなることを約束しました。

ミッションチームは、女性社会福祉貧困省大臣、アディ・アセナカ・カウカウ・フィリプ女史(Hon. Ms. Adi Asenaca Caucau Filipe)にも会いました。彼女は、障害関連の問題に重要な役割を果たしており、また、NGOとも密接に連携して働いています。この他にも、同省の事務次官であり、障害に関する中心的な政府組織であるフィジー全国障害者協議会(the Fiji National Council of Disabled Pesons: FNCDP)の役員である、Mr. Rishi Ramとの面会も果たしました。NGOの代表者たちも、同協議会のメンバーです。また、社会政策アドバイザーであり、太平洋諸島フォーラム事務局(PIFS:http://www.forumsec.org.fj/)である、ヘレン・タヴォラ博士(Dr. Helen Tavola)も訪問しました。PIFSは、南太平諸国14カ国が加盟しており、バヌアツにある国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)オセアニア小地域事務所(Oceania Sub-regional Office)と緊密に連携し、障害関連の課題について取り組んでいます。

さらに、養護学校の教員組合に所属の先生20名とも、情報交換やAPCDのコンセプトを共有する機会も持ちました。先生たちは、APCDとのネットワーキングや、トレーニングの実施および情報交換に関心を示しました。

e. ラオス人民民主共和国

APCDミッションチームは、2003年3月17日から30日にわたり、ラオス人民民主共和国において5つの政府機関とNGOを訪問し、APCDとの協力関係について前向きな反応を得ました。

ラオスは、人口約500万人の国ですが、障害者のための活動を行う団体は、数少ないのが現状です。しかしながら、リソースとなる人や組織が存在しており、大きな前進が見られます。

1995年に政府は、国家障害者委員会(National Committee for Disabled People:NCDP)を設立しました。NCDPは、労働社会福祉省が事務局を務め、保健省や、ラオス障害者協会(Lao Disabled Peoplesユ Association:LDPA)およびラオス女性障害者開発センター(Lao Disabled Women Development Center:LDWDC)を支援する教育省など、複数の政府機関が関わっています。

チャンペン・シヴィラ女史(Ms. Chanpheng Sivila)は、ラオス女性障害者開発センター(LDWDC)で注目すべき障害者のプログラムを行っています。私たちの知る限りでは、これはアジア太平洋地域において最初の女性障害者のためのセンターです。LDWDCは、全面的にラオス人により組織されており、6ヶ月コースの裁縫クラス、1ヶ月コースのバナナの葉のペーパークラフト、3ヶ月コースのシルク織りクラス、1ヶ月コースのコンピューター・トレーニングなどの職業訓練も行っています。

訓練生は、ベトナムの他、ラオスの首都やLDPAの支部のある5県(province)から来ており、センターの寮に滞在します。驚くべきことに、センターは男性の生徒も受け入れていますが、これは、ジェンダーによる差別をしたくないという思いと、男性障害者が利用できる職業訓練センターがないという事情によるものです。

LDPAは、5県に支部を持つ公認NGOで、障害者のための活動実施および調整機関として活躍しています。LDWDCとも協力関係にあり、職業訓練コースに、5つの支部から訓練生を募っています。

LDPAの代表であるシンカム・タコウパク氏(Mr. Singkham Takounphak)と、LDPAのメンバー兼NCDPの事務局であるブヴィエン・ラヌンノット氏(Mr. Bounviene Lanunggnot)は、APCDの研修コースに、障害者の中で将来リーダーとなる可能性のある人材を紹介することを約束してくれました。

ワールド・コンサーン(World Concern: WC)のプロジェクト調整員であるヴァンゼイ・フォネラムアン氏(Mr.Vangzay Phonelameuang)は、10年以上サラワン県(Sarawan Province)においてCBRプログラムを行っています。障害の予防につながるプライマリー・ヘルス・ケア(一次医療)と清潔な水供給が主な活動で、この他に、リハビリテーションや所得創出プログラムなども実施しています。

ハンディキャップ・インターナショナル(Handicap International: HI)のルク・デルヌヴェル氏(Mr. Luc Delneuville)とンゴ・サック・シン氏(Mr. Ngo Thuc Tinh)は、CBRプログラムの策定に尽力すると共に、ベトナム国境近くにおける地雷除去活動も行っています。ベトナム戦争後約30年間にわたり、ラオスにおける障害の主な原因は、爆薬が入ったままの無数の地雷であり、今でも多くが残されたままです。

HIは、障害者のためのCBRプログラムについて分析調査を行っており、国立リハビリテーションセンター(National Rehabilitation Center:NRC)の協力で、地域に住む障害者5000人以上にインタビューを行っています。また、2003年5月12日から15日にわたり、ベトナムで「CBR全国セミナー」の開催を予定しており、地域の障害者のリーダーを招へいする予定です。

ミッションの総合的な成果としては、ラオス政府およびNGOとの協力・支援関係を構築でき、非常に有意義なものとなりました。また、障害を持つ有能なラオス人リーダーとの出会いもあり、今後、APCDの研修コースの参加者候補となることが期待されます。

5. APCDの活動 (http://www.apcdproject.org/publication_3_apcdactivities.html)

a. APCDロゴコンテスト

APCD New Logo

APCDロゴ・コンテストには、多くの国から63の応募があり、チュラロンコーン大学の学生であるアリサ・ラッタナプラサポ−ンさん(Ms. Alisa Rattanaprasatporn)の作品が入選を果たしました。選考結果は、APCDの広報活動も兼ねて、2003年2月25日、アジア太平洋地域内研修コース「障害者に優しい環境づくりに関する研修」の開会式の席上で、発表されました。

ラッタナプラサポ−ンさんのロゴは、障害者と開発を象徴する現代的なシンボルです。色と球体はアジア太平洋地域を、中の線はネットワーキングと協力を意味し、右上にある小さい球体は世界的な人間性の開発を、半円は障害者を表しています。また、ロゴの動きは、障害者のエンパワメントとバリアフリー社会の実現に向け実施中のAPCDプロジェクトを表現しています。

b. 20031月から3月の活動を振り返って

2003年度の第一四半期を振り返ってみると、APCDは、アジア太平洋地域に資するであろう多くの活動を実施してきました。まずは、1月27日から2月1日にわたり、37名の参加のもと実施した自立生活研修に始まり、日本から短期専門家が、タイ文化センターとパタヤにあるレデンプトリスト障害者職業訓練学校で行われたこの研修をモニターするために招かれました。次に、2月25日から3月11日まで、タイにおいて第3回アジア太平洋地域内研修コース「障害者に優しい環境づくりに関する研修」を開催し、9カ国から31名の参加者を温かく迎え入れました。この研修コースは成功裏に終わり、その目的が達成されました。(両研修の詳細は、本ニュースレターの記事をご覧下さい)

さらにAPCDはアジア太平洋地域内のネットワークおよび協力関係を構築するために、ベトナム、フィジー、ラオス人民民主共和国の3カ国へミッションチームを派遣しました。各国で、中心的な活躍が期待される団体が特定されたことは、喜ばしいことです。

c. 2003年度4月〜9月の活動予定

4月7日 : APCDニュースレター第3号発行
5月12日〜15日 : ミャンマーへミッションチーム派遣
6月2日〜17日 : 地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)研修
7月1日〜4日 : バングラディシュへミッションチーム派遣
7月21日〜8月1日 : ウェブベースのネットワーキングに関する地域ワークショップ
8月 : 障害者に優しい環境づくりに関する研修
9月 : 障害者の自助組織のキャパシティ・ビルディング

6. 地域ニュース(http://www.apcdproject.org/publication_3_regionalnews_events_tips.html)

a. 障害に関するイベント

1.2003年4月21日-25日

第2回女性障害者地域リーダーシップ・トレーニング・セミナーが、DPIアジア・太平洋ブロック事務局(DPI Asia Pacific Regional Office)の主催により、タイ、ノンタブリで開催される予定です。
このセミナーは、途上国の女性障害者のリーダーのキャパシティ強化と、地域ネットワークの促進を目的とするものです。

2. 日程未定

アジア太平洋地域の国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)第59回会議は、SARS(重症急性呼吸器症候群)のために延期されました。変更後の日程は、追って決定されることになっています。本会議のテーマは、「特にHIV/AIDSに関する、経済的、社会的関心の統合を目指して(Integrating Economic and Social Concerns, Especially HIV/AIDS)」です。

3. 2003年5月31日-6月5日
第14回全国聴覚障害者競技会が、マレーシア ランカウイ(Langkawi)において開催されます。ASEAN諸国から127名の選手が参加を予定しています。

4. 2003年6月2日-4日
「障害者の権利条約」に関する専門家会議とセミナーが、タイ バンコクの国連会議センターにおいて開催される予定です。

5. 2003年6月5日-6日
第6回障害関連問題テーマ別作業部会(TWGDC)会議が、タイ バンコクの国連会議センターにおいて開催される予定です。この会議は、アジア太平洋地域においてインクルーシブでバリアフリーな権利に基づく社会の実現を目指した「びわこミレニアム・フレームワーク(BMF)の実施を成功に導くことを目指し、地域協調の取組みとして行われます。

b. 報告

アジア太平洋地域における障害者の職業訓練と雇用に関する技術コンサルテーション

国際労働機関(ILO)アジア太平洋地域事務所は、日本政府の協力のもと、2003年1月14日から16日にわたり、タイ バンコクにおいて、掲記会議を開催しました。政府組織やNGOの代表50名以上が参加し、障害者の職業訓練と雇用に関するアイディアを交換しました。コンサルテーションは、1983年に採択されたILO第159号条約「職業リハビリテーションおよび雇用」および「びわこミレニアム・フレームワーク(BMF)」のコンテクストにおいて、この地域の障害者の職業訓練と雇用に関する現状を考察するために行われたものです。また、アジア太平洋地域やその他の地域において、障害者の職業訓練や雇用の促進におけるグッド・プラクティスを共有し、関係者や、特に参加国にとっての提言を導き出し、ILOの条約とBMFが目指すところの実践につながることも目指したものです。

議論は、障害者の職業訓練と雇用に影響を及ぼす地域の傾向と、障害者が直面するバリアに関するものに集中しました。また、14カ国の調査データも精査されました。参加者は、国別のグループで作業を行い、障害者の職業訓練と雇用に関してその国が最も高い関心を持つ特有の問題に、いかに取り組むか活動計画を策定しました。

議論からヒントを得た参加者は、それぞれの国において、政府や雇用主、労働組合、障害者団体、NGOなどを巻き込み、国レベルで対話を行うことにより、これらの問題に取り組んでいくとの方針をまとめました。

詳細については、ウェブサイトhttp://www.ilo.org/abilityasiaをご覧下さい。

アクセス可能なICTと障害者に関する地域間セミナー及びデモンストレーション・ワークショップ200333日〜7日 フィリピン マニラ

掲記セミナーは、フィリピン政府協力のもと、国連開発計画(UNDP)の主催により開催されました。

このセミナーは、国連総会決議第56/168(障害者の権利条約)により、ミレニアム開発目標(MDGs)と開発における権利ベースのアプローチ(Rights-based Approaches)を支持し、障害者の社会生活と開発において、さらなる機会の平等を目指すことを目的としたものでした。関心のある後発開発途上国、低所得国、および移行経済諸国を対象とし、現在および将来の世代が持続可能で平等な開発を享受できるよう、意識広め、アクセシビリティの高いICTを構築するために、知識や経験を交換する機会を提供しました。

ワークショップには、10カ国の参加があり、特に「グローバル インターネット アクセシビリティ ウェブサイト:the Global Internet Accessibility Website」を通じて、障害者にとってよりアクセシビリティの高いICTを目指す方策について議論がくり広げられました。

最後に参加者は、「万人にアクセス可能なICTのためのキャパシティ・ビルディングに関する戦略枠組み」を策定し、それを行動に移すための目的と戦略を示す戦略文書をまとめました。

「アクセス可能な情報とコミュニケーション技術(ICT)に関するマニラ宣言」と、「マニラ アクセス可能なICDデザインの提言(the Manila Accessible ICT Design Recommendations))が発表されました。これは、特に障害者への適切な配慮を取り入れた、万人にアクセス可能なICTを求める政策文書/政策提言文書として、国連特別検討会にて取り上げられる予定です。詳細については、http://www.worldenable.net/manila2003をご覧下さい。

c. 記事

タイ発、録音図書販売

タイの大学生が、視覚障害者の読書を支援するコンピュータープログラムを開発しました。Dリーダー(D-Reader)と呼ばれるデジタル録音図書プログラムは、ボランティアによる音読を要求に応じて録音・再生します。このシステムにより視覚障害者は、本のページをめくるように、思いのまま読み進めたり戻ったりすることができます。このソフトウェアは二ヶ国語プログラムになっており、タイ語を他言語に置き換えることも可能です。プログラムは無料でダウンロードでき、また、録音図書を含むCD-ROMが、ラチャスダ財団(Ratchasuda Foundation)から入手可能です。

タイ国がアフガニスタンへ車椅子を寄贈

日本のNPO、アジア車椅子交流センター(WAFCA)と日本民際交流センターによるプロジェクトの一環で、タイ製の車椅子100台が、日本、タイ、アフガニスタンにおける公的機関・民間機関の協力を通じて、アフガニスタンの戦傷者へ寄贈されました。これは、アフガニスタンの障害者支援を目的としており、戦後、多くの子どもが地雷の被害にあっていることから、特に子供たちを対象としたものです。タイの車椅子メーカーは、国際機関がタイ製の車椅子の質を認めたことを非常に喜んでいます。今回の寄贈に協力したタイの車椅子工場では、障害者10名を含む総勢14名のスタッフが、年間約1000台の車椅子を、ヨーロッパ製や日本製よりはるかに安いコストで製造しています。

7. 編集後記 (http://www.apcdproject.org/publication_3_editorial.html

APCDニュースレター 第3号は、グローバルな展望を熟考しようと努め、自立生活(IL)と障害者に優しい環境づくりのための研修についての記事を掲載しました。APCDの使命は、親密な協力関係とネットワーク構築を奨励することです。今後とも、皆様と、意見や関心、興味、知識を交換し、障害を持つ人々の生活の質の向上に努めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
        編集スタッフ一同


                                      (翻訳 横谷薫)

 
APCDニュースレター・エンパワメントの翻訳です。
本文はhttp://www.apcdproject.org/publication-Newsletters.htmlで御覧になれます。