フィリピンKAMPIの統合教育推進プロジェクト
〜 BBC(ブレーキング・バリアー・チルドレン) 〜

第147回アジア障害者問題研究会報告
2003年12月6日  
前JICA専門家 吉田美穂


                   
* フィリピンの障害者は人口の1.23%とされているが、7000の島からなり調査は困難であり何回かおこなっているが正確な数字はつかめていない。政府は2003年10月からより正確な調査を開始する予定であったが、11月中旬までは実施されていない。
* 障害当事者の全国団体であるKAMPI(フィリピン全国障害者連盟)はデンマークの「ポリオと事故の犠牲者の会」の協力で1995年に11月から1999年4月まで障害児のためのBBP(ブレーキング・バリアー・フィリピン/フィリピンの障害者へのバリアーを打ち破る)プロジェクトを実施し、STAC(刺激と治療的活動センター)をイロイロ、マニラ、カガヤン・デオロなど5カ所で、サテライト・センター を20カ所で運営。プロジェクトは現在BBC(障害児へのバリアーを打ち破る)としてSTACの運営のほかに小学校で障害児を受け入れるための教員へのトレーニングコースの実施が加わり継続されている。
* STACではPT、OT、ソーシャル・ワーカーが働き、障害児の親たちは子どもへの自宅でおこなう訓練を習いつつ、アシスタントを務める。大半は女性であるBHW(バランガイ・ヘルス・ワーカー)はバランガイでのプライマリー・ヘルス・ケアの担い手であり、一部が障害児ケアや発見のトレーニングを受けて、地域で実施されているSTACのサテライト・センターの運営に関わっている。サテライト・センターはバランガイボールの1室を借り、BHWが積極的であると、予定どうりで毎日運営されている。週2回、半日STACスタッフが出張してくる。
* ケゾンのSTACは8ム5時に開かれ、親が連れてくる2-14才の子供は脳性マヒや多動の障害が多く、てんかんを持っている場合も多い。ポリオは殆どいない。そこから3-4人(PT、OT、ソーシャルワーカー、学生実習生、本雇いになるのをまっている新人のPTやOTのボランティア)がチームを組んでサテライトを巡回する。現在
* 親の会がケゾンのSTACの運営をおこなっている。
* マニラの中心に近いマンダルヨン市はマニラ首都圏で唯一障害者担当部署をもち、サテライトセンターは運営をKAMPIから市に移管された。 現在サテライトセンターの訓練はフィリピン大学卒業のOTがPT,OTの学生を連れてボランティアとそして実施している。また、Hand of Mercy(イギリスのキリスト教系NGO)がおこなっている特殊教育プログラムと貧しい家庭の子どもたちへの給食サービスがサテライトセンターの機能と合体して実施されている。
* 国内の養護学校の数は少ないく、教育を受けている障害児は3%である。BBCはBBPの機能を強化しインクルーシブ教育を目指している。普通校のクラスの定員は45人であるが、60-70人の所もあり、親がずっと付き添っていまければ勉強できなかった。BBCで一般教員への障害児受け入れのトレーニングがおこなわれるようになり、今まで学校に来ようとしてもだめだった子にもチャンスができた。KAMPIのスタッフであるSPED(特殊教育)コーディネーターは教員の特殊教育トレーニング・コースのアレンジやファッシリテーターを勤め、STACに通っている障害児が一般学校に通うときの橋渡しをおこなう。SPEDコーディネータには元特殊教育教員が多い。バギオで開催されたコースの場合は週末を使った三泊四日で、36人の教師が参加し、教育省が講師を派遣し、地方政府が日当、交通費等を負担した。同様な訓練コースは年2回ほど開催される。KAMPIのスタッフは6ヶ月毎の評価に基づいて雇用を更新する。プロジェクトの終了時の雇用調整によって辞めると外国留学の資金や次のスキルアップを保障してもらえる場合が多い。
* 2003年のBBCの終了に合わせて、パナイ島イロイロをはじめとするすべてのSTACとサテライト・センターは地方政府またはNGOに移管された。ケゾン市のSTACの場合、運営責任は親の会となり、市は今後2年間は今までの予算の半分の資金提供を約束しているが、その後の確約はない。現在の市長が再度選挙に勝てば同じ額は多分保障される。しかし、残りの半分はほかで調達してくる必要があり、提供してくれるドナーを親の会が中心となって探している。