CBRを否定した障害者の地域活動
                    

第144回アジア障害者問題研究会報告
2003年9月6日
バングラデシュ障害者福祉協会・Ashrafun Nahar Misti

         
* ダスキン・アジア太平洋リーダー育成事業第5期生として8月末より一年間日本に滞在する。2年前からBPKS(バングラデシュ障害者福祉協会)で活動をしている。
* 私が参加する前からBPKSは女性障害者への支援をしていたが、協会の中で女性障害者の地位は低い。政府からの支援が得られるように、戦っている。今年6月には会議を開いて女性障害者100人を招待したところ、75人が出席した。その中の13人は学歴があり、頭が良く、外資系銀行などで働いているが、生活は大変である。庶民の障害者は、ほとんど学歴がない。
* BPKSは最大の団体であり、障害者に自分のことを弱いと思わなくさせるために働いている。WHOの推定ではバングラデシュに13万人の障害者がいるが、BPKSはそのうち1万人を支援している。個人でがんばっても良い結果がでないので、皆で集まってやっている。
* BPKSのPSID(障害者の開発への自己イニシャイティブ)プロジェクトは、国の64郡のうち12郡で6500人(女性3203、男性2267人)が参加して実施されている。障害者は宗教などに関係なく、平等にメンバーになれる。財団等からもらった資金で教育支援、医療機関へのリファーラル、貯蓄の奨励などを行なっている。1日5タカ(10円)、5タカがその日にできなかったら翌日お金が入った時にまとめて、ためて、それを時には個人に貸すこともあるが、通常はグループに貸し出す。7-11人がグループを作ってどのような事業をやりたいのか決めて、無利子で借りる。支払えない人の場合は、グループの人が支払い、失敗しても厳しく取り立てる。しかし今のところ調べてから貸すので、失敗例はない。池の中で魚を育てるという大変な事業も成功した。PSIDのグル−プのうちすでに6カ所が独立し、4カ所で仕事が始った。
* PSIDをCBRの一形態として紹介する人がいるが、そうではない。CBRは一定地域の中でそこの人が働くが、PSIDでは自分の地域でなくても働ける。CBRでは例えば白状をもらってそれで終りだが、PSIDではそこから何ができるか考える。BPKS代表は、CBRは障害者のためにならないので、いらないと言っている。
* バングラデシュでは、小規模事業が多い。障害者が仕事をすると、障害者に対する社会の見方がかわる。昔は学校や仕事のチャンスがなかった。政府は特定の学校で統合教育プログラムを推進しているが、それだけでは十分でないのでBPKSは学校にいけるように支援している。貧しく学歴がない障害者者は国からの支援があると知らないので、物乞いをする他ない。郡の長が保障すると、国立銀行であるジョノタ、ジョナリ、オグルニ、農業銀行から、障害者が無担保で5万円、次の段階では10万円(50,000タカ)のローンが組める制度ができた。
* 障害者は投票所が上にあったり、階段があっていけず投票できなかったが、今は一階に設置しスロープがついていて大丈夫である。障害者の男女一人づつが選挙で選ばれ、union council(村議会)の議員と議長になっている。

                                   (文責 中西由起子)

<参考資料>

PSIDの活動   ADI 中西由起子

 BPKSが唯一採用したPSID(Persons with Disabilitiesユ Self-initiatives to Development、障害者の開発への自己イニシャイティブ)は地域社会のすべての人の平等な発展を目的とする障害者の事業である。ChandpurとKurigramで1999年に始まり、Manikganji, Tangail, Jamalpur, Mymenshingh, Barisal, Bogra, Mehendiganji, Bandarban, Narshingdi, Sylhet, Moulvibazarで実施され、さらにNoakhaliにも拡大される予定である。会員には、@能力構築や自信獲得のために12の訓練コース、A医療照会、B自宅での障害予防や障害の軽減や矯正のためにセラピー、C移動とアクセスを高める福祉機器の支援、D学力向上のための教育支援、E社会経済的自立達成のためのIGA支援、F草の根のレベルでの団体ヤ制度の開発のためのPSID Centerが用意されている。
 2002年7−9月の活動実績は
会員は3227人(男性1746人、女性1481人)。
@家庭でのセラピー 127人
A医療のための照会サービス 4人
B教科書、ノート、鉛筆、学費などの教育援助を受けた障害児 422人
C地域社会での前向きな変革を奨励する啓発の会議 52回、678人の参加
Dロビー活動と権利擁護 10箇所のPSIDセンター、72人参加
Manikganj PSID Centerでは7月30日に暴行を受け殺された障害者の死に抗議するデモがあり、犯人を見せしめのために罰するよう要求した。
EPSIDプログラムでの貯蓄 43758タカ
Fローンの提供 35人、33000タカ
G学校でのスロープの設置 2箇所(BarisalのMehendigonjにあるT.T.D.C. Government Primary School to Uttar Daut Pur Primary School)
 2002年10−12月の活動実績は
会員は6426人(男性2934人、女性3492人)。
@家庭でのセラピー 134人
JamalpurのPSIDセンターでは10月末に2週間の第2回ホーム・ベイスド・セラピー訓練コースを開催した。他のセンターのBPKSユニット(草の根レベルの団体)運営者4箇所からの16人の参加者と地元からの12人が参加した。最初の1ヶ月は、参加者がセラピー提供者として脳血栓、CP、内反足などの身体症状や障害に対応できるように、基礎的理学療法と作業療法、簡単な言語療法に関する教室での講義と実技に費やされた。
A耳の病気やその他の合併症のため専門家への照会サービス 42人
B教科書、ノート、鉛筆、学費などの教育援助を受けた障害児 154人
C地域社会での啓発の会議 65回、876人の参加
Dロビー活動と権利擁護 12箇所のPSIDセンター、95人参加
E障害者団体やPSIDを通しての福祉機器の配布 64人
FPSIDプログラムでの貯蓄 63083タカ
Gローンの提供 35人、19400タカ
HDPOD(開発に向けた障害者団体)の建物建設 3団体(Kurigram, Chandpur, Manikganj) 

参考文献
Bangladesh Protibandhi Kallyan Somity, One for All Newsletter, Vol.3 No. 4, Oct.-Dec. 2002
Bangladesh Protibandhi Kallyan Somity, One for All Newsletter, Vol.3 No. 3, July−Sept.. 2002