第133回アジア障害者問題研究会報告
2002年9月7日
グローバル・リンク・マネージメント 横谷薫
*1999−2001年にイギリスで開発の修士号を取得の際、1年目終了時の2000年7月後半から1ヶ月半スリランカで調査を行った。サルボダヤのCBRや知的障害児居住施設3ヶ所を運営するプリティブラ・インファント・ホーム、1991年発足のジャイプール義足プログラム、主に公立の女性の知的障害者入居施設のメス・サバナ・チルドレン・ホーム、身体障害者対象の公立のビクトリア・ホーム、私立の身体障害児校チットラーレン・スクールも訪問した。
* スリランカは北海道より少し小さい、インドの南にある島。仏教徒のシンハリ人と、分離独立運動を展開しているインドからプランテーション・ワーカーとして連れてこられたヒンズー教徒のタミール人との、世界の中でもっと長い内紛による民族対立が続いている。中所得国の下位にある経済発展に比して社会指標が高いので、社会開発のモデルとされている。学歴社会ではあるが、教育があっても職に就けない人は多い。女性の就学率も高いが、それが現実に反映されていない。プランテーション地帯での賃金、就学率は落ちる。
* 政府に登録されていない障害者は、補助金も受けられずに家にいる。1997年までは義務教育制度がなかった。障害児では1.6%しか、基礎教育を受けていない。
* 善行をすると、よい行いが生まれるというシンハラ仏教の信念”カルマ”に基づき過去の悪行の償い将来への徳を積むために、ダンネと呼ばれる、食べ物、お金、衣類等の施設への寄付がしばしば行われる。しかし、自分の都合で自分のためにやっているという感が強ュい。
* サルボダヤ・シュラマナーダ運動は1962年に始まった、、ユニークな手法による地域開発である。サルボダヤとは、労働の分かち合いを通してすべての目覚めの意味。サルボダヤ・スワセタ・セワは、サルボダヤの独立ユニットの一つであり、社会福祉を担当し、CBRはその活動の一つ。
* 1985年にオランダのNGOの援助で始まったサルボダヤ・スワセタCBRプログラムではプロジェクトマネージャー1名、フィールド・スーパーバイザー2名、大半が男性からなるフィールド・ワーカー8名、ボランティア100人はすべて地域の人である。アウェアネス・プログラムや教育機会提供を重視し、問題の原因をさぐっていく。
* CBRが実施されているゴール郡とカルタラ郡の19村の中で、主産業をプランテーションとするため厳しい社会・経済的状況にあるネワル地区にはさらなる支援が必要と考え、調査対象とした。25%の面積が11のプランテーシVョンで占められ、森が深く山が多い。生活の余裕がないため、最初行っていたミーティングも今はなく、ボランティアがいないので男性フィールドワーカー一人が292名をカバーする。学齢期の障害児は19名。フィールドワーカーはある程度の学歴があり、障害者は患者と呼ばれている。親はカルマのせいで、子供に障害ができたと思っている。
* CBRの活動としては、基礎的な診察、生活保護手続きの手伝い、診断や判定のため診療所への障害者を連れて行くこと、地区の学校でアウェアネス・プログラム。8年間やってきて、否定的状況は少しは変わっているとのサルボダヤの見解。地域を良くしようとの視点や、地域の人と信頼関係の点ではよいが、強い医学的アプローチ、地域の他のプログラムと連携をとろうとしないこと、他との比較もできず、評価もしていないなどの問題点もある。
添付資料
サルボダヤ・スワセタCBR 1999年 活動実績
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00-05 | 26 | 32 | 58 |
05-18 | 97 | 79 | 176 |
18-45 | 64 | 48 | 112 |
45 才以上 | 46 | 26 | 72 |
合計 | 233 | 185 | 418 |
理学療法 |
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機器の使用 |
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学校教育 |
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自宅での教育 |
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日常生活動作(ADL) |
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自営業 |
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機器 |
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その他の資金援助 |
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病院へのリファーラルと交通手段の提供 |
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脳性マヒ | 120 |
脳血管事故 | 34 |
ポリオ | 9 |
心筋症 | 6 |
二分脊椎 | 7 |
脊髄変形 | 4 |
脊髄損傷 | 17 |
切断 | 11 |
彎曲足 | 10 |
内反膝 | 6 |
外友膝 | 3 |
視覚障害 | 21 |
全盲 | 7 |
言語聴覚障害 | 15 |
聴覚障害 | 20 |
言語障害 | 7 |
Erbs Palsy | 2 |
発作/てんかん | 8 |
ペルテス病 | 1 |
火傷 | 2 |
ダウン症 | 8 |
精神薄弱 | 38 |
口蓋裂 | 9 |
骨折 | 20 |
関節炎 | 10 |
神経の障害 | 17 |
骨の病気 | 3 |
その他の足の障害 | 3 |
合計 | 418 |
サルボダヤ・スワセタと地元学校の関係
学校名 タイプ 生徒数 SSCBRとの関係 アウェアネス・プログラム メディカル・クリニック その他 Ambelegedara 3+ 20 - - - Lamkagama 3+ 159 1 2 - Ihala Lelwala 3+ 117 - - - Warukandeniya 3+ 45 1 - - Medagama 3+ 124 - - - Milawa 3+ 212 - - - West Batuwangala 3+ 59 1 - - Mawanana 3+ 233 1 - - Mawita 3+ 261 - - - Dewalegama 3+ 51 - - - Hppitaya 3+ 164 2 2 障害者のための地域福祉会が設立されている。 Gigimmaduwa 2 434 - - - Batuwangala 2 435 3 - 5人の障害児が受け入れられている。 Dellawa 2 569 3 - 3人の障害児が受け入れられている。 Kadihingala 2 372 - - - Neluwa ns 2356 7 - - 合計 - 5611 19 4 学校のタイプ (表1:スリランカの公立学校のタイプ参照)
3+: 1-8年生 (タイプ3の学校の派生タイプ)
2 : 1-11年生 (タイプ2の学校)
ns : 1-13年生 (国立学校)
出典:Information of NELUWA (2001)