タイ・パケット身体障害児ホームのサービスと子供たち
                    

第124回アジア障害者問題研究会報告
2001年12月1日
青年海外協力隊OV 丸山美香


                      
*平成11年7月から13年7月までタイに派遣され、バンコク北にある労働社会福祉省公共社会福祉局リハビリテーション委員会に属する公的障害者入所施設パケット身体障害児ホームでPTとして働いた。タイでは公的障害者収容施設の数は少なく、バンコク周辺に集中している。
*多いときには450人以上が入所していたので、他の職業訓練施設に出したり家に帰るようにさせたり、知的に重い障害を持つ子は知的障害児ホームに移すという手段で20人ほどが移動し、帰国時には430人ほどになっていた。寝たきりから廊下を走り回れる子まで障害の程度はまちまちで、施設の記録には詳しい疾患名がない。内部疾患の子供もいる。30歳を過ぎても成人施設の不足や家庭へ戻る事が困難なため入所児として暮らしている人もいる。
*対象は5歳〜18歳の障害をもつ孤児、家族が貧しい子供、また、親が病院で生んで置き去りにしたり、ミャンマー等の隣国から出産に来て親が逃げてしまうケースや、見世物小屋で 働かされていたケースもある。
*お布施をして徳を積むというタンブンを実践する人から食事の材料の寄付がある。子供たちの普段着もお布施である。施設内にある学校や職業訓練、リハビリに行く子供には制服がある。子供の医療費は無料であるが、手帳があっても使える病院が限られ、多くは公立のよくない病院である。リハビリの部屋には、寄付で一通りの機器が揃っている。居住棟にいるほとんどの子供は、日常生活での活動ができない重度の子
が暮らし、11〜12人の職員が交代でついている。
*保健室には療護婦3人がいて、障害の重い子供の世話をしている。公共福祉局より週に1回医師が派遣される。往診に来る医者が処方したてんかん等の薬を看護婦が日常配る。PTは、常勤者はCBM(ドイツのNGO)より派遣され、向かいの乳幼児ホームと兼任の非常勤PTもいて、週3回働く。義肢装具技師は2名いて、主に修理を担当する。職員の3割は公務員である。
*障害者手帳の交付、交渉、寄付などを担当するのはソーシャルワーカー1名、手帳の手続きや外部との交渉に立つ3名、サイコロジスト1名である。捨てられていた子供には国籍がないため、450人のうち150人ほどしか手帳をもっていない。10年くらい施設にいると国籍がとれる。
*皿やカップの絵付け、足拭きマット製作、さをり織り、ティッシュカバー製作を行っているが、職業訓練というより作業所としての活動である。施設の行事の際や来客に販売している。
*子供たちの教育には、敷地内に准学校としての養護学校がある。郊外にある聾学校、盲学校の寄宿舎に入っている子供もいる。肢体障害児は施設の車が送迎し周辺の統合教育を行っている普通学校に通っている。
*オーナーが無料で貸してくれた民間のプールに平日の昼間1
回に5人くらいを泳ぎにつれていくようになった。
*介護をする人の多くは、小学校卒で他に仕事がないので月4000バーツの給与で働いている。子供と間に距離があり、怒られるのがこわいと子供は頼みごとができない。