障害者の統合度の測定からみた最近の韓国の障害者政策 
                    

第118回アジア障害者問題研究会報告
2001年5月12日
韓国・延世大学 Dr. Ick Seop Lee

*韓国延世大学社会福祉の教授である。昨年6月より1年間日本社会事業大学に客員教授として来ている。
*政府予算には活動の基となるインプット、国民や利益団体の努力が具体化され結果があらわれるアウトプットがある。政府予算からその国の障害への理解、同意がわかる。
*韓国の障害関連の国家予算は総予算の0.17%にあたる、140億円である。小額であるが前年1999年度より31%増加しているが、基準となる額が少ないので増加しても大した影響はない。その60%(40%は居住施設、19%は福祉センターなど非居住施設)は施設でのケア、26%は貧困障害者の生活の手当てに使われる。基本的なサービスやプログラムに使用されて、他の福祉先進国が個人への援助を中心とするのと異なる。1988年には居住施設予算は80%であり、それが40%になったわけであるから、政府は統合化のアプローチに向かったと言えるが、その成果ははっきりしていない。
*障害者として状況は良くなっているのか考え、統合の度合いに興味をもった。そのデータはないので、現在障害統合測定の詳細研究を行い、それに基づいて韓国と日本を比較している。アメリカではHDI(Human Development Index)という指標を用いて、全ての国にdeprived indexを用いてー1から+1で教育、参加などを測定する方法である。私が提唱するDII(Disabled Integration Index)では全く統合のない0から完全な状態の1までで表す。韓国では0.48という中間レベルであった。DIIは、簡単、測定可、比較可という3条件を満たしているので、他の国ででも使用ができる。教育、雇用、予算、物理的環境、社会的態度が基準からどの程度離れているか(deprivation)を指標としている。韓国では例えば今一般の失業率は9%であり、それを障害者の失業率と比べた時の差がdeprivationとして表され、普通教育と特殊教育、障害者が使えない一般の設備なども同様に係数で表わす。DIIは5つの要素を使うが、それ以外の所得や移動、福祉機器などの要素を入れないのは問題とされている。しかし上記3条件を満たさなければDIIは意味がなくなる。また障害関係のデータは先進国でもなかなかない。仮にあっても範囲、貨幣単位、使用者のレベルなども違い比較できるものとするのは大変である。
*DIIで社会的態度は簡単に測定できる。車椅子の人が道で例えば段差などの障害物に直面し助けが要ると分かる状態で人々の反応をみる。面談や文書での調査は社会的願望度が出て来てしまうので行わない。韓国では20ヵ所で、土曜日の1−4時まで障害者が道で助けがいる役を演じ隠れて何人が助けたかをみて、5000ケースが集まった。デパートでは女性が多いし、朝は急いでいる人が多いし、市の大きさ、場所などの要素をコントロールして実験を行った。車椅子の人の状況が分かって助けられる状態にいるそこを通った人を母数として何パーセントが援助をしたか数えた。事前の調査では助けると言った人の割合は多かったが、実際には21%しか援助行為をしなかった。盲人が白状をもっているだけでは、分かりにくいので使わなかった。都市部では障害者に対してもっと意識があると思っていたが、そうではなかった。車椅子の形、その人の服装、時刻、風の具合、天候、場所、行事など援助行為に影響を与える要素がいろいろあるが、それを制御して20の異なる場所を選んだので、信頼できる数字であると思っている。100%が助ければ最善の状態なので、それから21を引いて100で割って、1の状態からどの程度deprivationがあるのかみた。
*日本では政府のインプットは多いがアウトプットとなる統合はどうなっているのか。多くの国でインプットに関する文章はあるが、その結果(アウトプット)は表されていない。そんためこのような簡単なインデックスを作った。障害者問題は普遍的なものであり、人権に関わるものであるから、DIIはもっと多くの所でテストされて欲しい。日本では来週東京の3ヵ所でテストを行うことになっている。

添付資料

韓国と世界での障害問題(Disability Issues in Korea and the World
延世大学社会福祉学部準教授
Ick Seop Lee, Ph.D.  (中西由起子訳)

1.序論
 「万人の社会」に向かって現在の状態を動かすために集まっているここでみんなさまとここでご一緒できることは嬉しいです。 皆さまと考えや経験を分かち合い、少し皆様の功績に寄与できたらと思います。 しかしながら私はアカデミックな講義をするのではなく、むしろ障害を持つ人々を含めたすべての人々の生活の質の向上に必要な問題を提示します。 これが正式のセミナーであるので、私が興味を持っていることを提供したいと思います。

2 .韓国の障害予算の簡単な紹介
 政府予算は適切な作用のためのインプットとアウトプットの両方を意味する。予算はインプットであるのは、それがあらゆる種類の活動が実現することを可能にするからである。一方、それは国が注意を払う事業の結果を表している。従って、政府の予算の大きさは、金銭が使われる分野に関する合意レベルの尺度として理解できる。
 社会が以前よりもっと障害問題を意識しているので、韓国政府の障害予算は絶えず増加してきた。障害にお金が使われる限り、増加はいずれにせよ好ましいバロメーターであろう。しかしながら、増加の割合には批判的考察が必要である。すなわち、0の予算に金額が加えられればいずれにせよその割合の急増を意味する。2000年度の障害予算は、 前年1999年の1476億ウォンと比べると 31% 増加した。それは政府予算総額のわずか 0.17% であった。前年と比べると31%という大幅な増加ではあるが、障害を持つ人たちの福祉を向上させるためにはまだ少ない。
 障害予算全体のうち、 579億ウォン( 約 40% )は居住施設に割当てられ、一方非居住型の施設には279( 約 19% )であった。更に、 7.7億ウォン( 約 5% )は、職業のリハビリテーション施設にまわされたが、3.8億ウォン( 約 2% )は国立リハビリテーション・センターが取った。残りうち、38.1億ウォン( 26% )は障害をもつ貧しい人たちへの資金援助のために与えられ、一方障害予防と障害登録には11.8億ウォン( 約 8% )であった。
予算の特性を簡単に検討すると、個人への援助サービスよりむしろ施設ケアまたはプログラムという傾向がわかる。説明したように、韓国では障害が未だに施設ケアまたはプログラムを提供しつづけているように、政府障害予算総額の約 60% は施設関連の分野に向けられている。更に、居住施設への予算は1990年以来着実に減少してはいるが、全体の中で最も大きい部分を占めている。

3 .障害を持つ人の統合の測定
 できれれば今日お話したい問題点は、障害を持つ人たちの統合に関係したことである。
特に、統合の測定とその国内と国家間での比較である。ついさっき述べたように、政府予算は一定の目的を達成するための社会的なインプットを表している。この意味で、障害予算には、例えば社会への障害を持つ人たちの統合のようなそれ自体の目的がある。
 我々が統合の達成に合わせて社会的な努力をしようとの提案を受け入れるなら、達成された統合の実際的レベルは答えられないままになっている。前の統合レベルのからどのくらい動きどこにいるかを、我々は知らない。国家の中で現在の統合のレベルを測定しようとしたように、統合のレベルを表す全ての要素を考察することは可能なように思われる。 しかしながら、1つの国で測定されたものであっても、国々の中で比較できるデータがほとんどないので、同時に測定及び比較を行うことは考察は難しくする。私の研究に比較が含まれている理由は、障害を持つ人たちの統合のレベルが普遍的に重要、または少なくとも現代の社会が関心事であることである。測定と比較の両方を実行するために、統合を測定する基準を発展させる必要がある。つまり、統合の研究には、単純で、測定可能で、数値で表される方法で統合のレベルを表す尺度の開発が条件となる。それがシンプルな数のように思われるので、 3つの条件を満たす方法は、簡単な数で国の間での比較が可能であるので障害統合指標( DII )と呼ばれることとなる。

4 .中間段階での報告と討論
 DII 研究は1998年に韓国で行なわれ、韓国社会の障害を持つ人たちの統合のレベルは0から1までの指標のうち0.48である 。DIIは国連の人的開発指標(Human Development Index)で活用された剥奪指数に基づく式によって得た。DIIで使われる尺度は、1)障害者雇用、2)障害者の平等な教育、3)統合のための政府予算、4)物理的環境、及び5)障害者への社会的態度。

5 .障害を持つ人たちに対する姿勢
 測定とその意味という観点から少し態度について論じたい。
 この方法の限界やそれに代わるものに関する多くの重要なコメントを与えて欲しい。