タイ・キリスト教盲人財団の活動

第113回アジア障害者問題研究会報告
2000年12月2日
国際キリスト教大学・二葉泰子

          
*タイキリスト教盲人財団は6ヵ所にセンターがあり、各自資金集めをし運営していた。そのうち4ヵ所のセンターで今年7-8月インターンとして働いた。
1コラート バンコクからバスで2-3時間なので訪問者が多く、寄付を受けやすい。統合教育準備校(preparatory school)がある。寮は男子のみ。15歳以上で小学校に入学できない人やもっと勉強したい人には、教科やござつくりの職業訓練をするノンフォーマル教育がある。県のリソースティーチャー(学校のリソースルームにいて、体育の際に視覚障害児に別のことを指導したり、試験の点訳等を行う)としてセンター職員2人も派遣され、センターで点字プリンターを使ったり補習をする。教員養成課程にも職員を送り、歩行や点字など2日間ほど講習もする。
2ロイエット バンコクからの来訪者に大騒ぎするほど田舎にあり、食べ物を施す来客は来るが、外国からの援助は入りにくい。男女各々の寮があり、150人ほどがいる。統合教育の生徒を自宅に帰そうとしているが、貧しいので寮にいたがる。センター職員2人が巡回リソースティーチャーとして、2日に一度ぐらい統合教育校をまわりチェックしている。失明防止のため、眼科医の指導もしている。盲聾児教育の方法を模索中で、歩行や手作業の訓練をしている。CBRも実施している。
3コンケン 財団本部として各センターのコーディネーションもする。教科書を作るメディアセンターではスキャナーやタイプが揃い、ここやコラート、ロイエットで校正しバンコクで印刷する。準備校や統合教育校の生徒の多くは貧しく、大学進学者は少ない。
4バンコク ビルを新築中である。重複障害児者を対象にし、約60人の大半は親に捨てられて寮で暮らす。他の施設からの連絡を受けて受け入れる。大人には刺繍や布の織物、きのこ栽培、農作業の職業訓練がある。統合教育に進む子はまれである。その他校正した原稿を印刷、製本し、出版している。教育省から要請があると期限が決められているので、忙しい。
*統合教育準備校は幼稚園を兼ね、15歳までの視覚障害児が入学できる。一クラス10人程度で、センターの教師(大半は非障害者だが、音楽など科目によっては盲人が教える)が点字、基本的タイ語、英語点字、数学、そろばんの使い方、数学記号を教え、試験の結果で統合教育の小学校に進める。歌を歌っての歓迎が来客があると優先され、授業の中断も多い。コラートでは始まったばかりなので、8歳以下、以上、もうすぐ1年生になる子に1年生レベルの教育を行うクラスの3つだけがある。コーンケンでは知的障害、LDの重複児は別クラス、ロイエットでは人数が多いので、年少、年中、年長の10 人のクラスが幼稚園のように運営され、他に一年生扱いのクラス、知的重複や盲聾のクラスがある。コンケン、ロイエットでは発見されるのが遅かったため年長の子が多い。
*統合教育では数学、英語の教科書は点字、他はテープで渡されることが多く、上級になるとテープが多くなる。点字教科書は短期制作が求められ、質はよくない。中学ではリソースティーチャーが7人ほどの生徒のプリント、朗読に時間を取られ、生徒の訪問活動もできず状態を把握できていない。生徒自身が数学での図の使用など、学習に困難を感じている。理科は選択させていない。小学校では体育とコンピュータ(コラートの場合)のみ別になっている。センターの寮から学校に通う子供の世界は狭く、大学に行って自己管理できない子もいる。
*コラートの統合教育では常にリソースティーチャーがいて相談が可能であり、小学校レベルまでのケアは世界的に上位にある。就職先探しまでしている。問題は子供が他の生徒と同じであることを望み、多くが白杖を使わずペンで点字を打つようなことをすることである。
*重複障害者には、バンコクでは収益には結びつかないが種々の職業訓練を行い、ロイエットでは試験的にクラス分けをし受け入れているが、他のセンターでは他の生徒と一緒に学ぶ。
*ロイエットの4、5人のCBRワーカーは隣のマハサラカムにも派遣され、一日に各自5ー6人の視覚・知的障害、CP、盲聾の障害者を訪問し、食糧や日用品を渡してくる。障害者たちは織物、農業(盲人6人が共同で農作業)、水牛の飼育、線香づくりの仕事等をしている。盲聾担当の教師も同行し、重複障害者も支援している。地域を訪問すると新たに障害者が発見され、対象者が増える結果サービスが薄くなっていく。